アーティクル
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修士会だより 2020年6月号

 新型コロナウイルスの感染拡大により、6月13日に予定していた「特別公開講座」を中止せざるを得ませんでした。そこで急遽「紙上研修」として、ア学院特別講座の講師をされている保険医学会の林 哲也先生に感染症についてご寄稿をお願いいたしました。

「感染症の基礎から見た新型コロナウイルス感染症と今後の生き方」

林 哲也 氏
《プロフィール》
信州大学医学部卒業。合同会社ライムライト代表、
東京タワーヴュークリニック麻布十番院長。
日本薬科大学客員教授兼任。

 最初に感染症の基本について説明します。感染と感染症の違いですが、病原体が人(宿主(しゅくしゅ)ともいいます)の体内に入り、どこかに居場所を見つけた(定着した)段階を感染といいます。その後、徐々に病原体が増殖し人に明らかな症状が出た(発症した)段階が感染症です。感染し病原体が体内にいても症状が出ない場合を不顕性感染、症状が出ている場合を顕性感染といいます。感染した後に感染症まで至るか否かは、人と病原体とが力比べをした結果です。
 感染した病原体への攻撃力は免疫(力)と呼ばれ、自然免疫獲得免疫があります。自然免疫は全ての人に備わっており、あらゆる病原体を即座に攻撃できますが、攻撃力は強くありません。それに比べ獲得免疫は、特定の病原体を強力に攻撃できますが、発動するまでに1週間程度を要します。獲得免疫には、液性免疫細胞性免疫があり、前者はB細胞が、後者はキラーT細胞が主役になります。
 一方、病原体の攻撃力には感染性病原性毒性の3要素があり、それぞれの強弱(有無)により人への有害性が決まります。病原体には、サイズの大きい順に、寄生虫(蠕虫(ぜんちゅう)、原虫)、真菌(しんきん)(カビ)、細菌ウイルスがあります(プリオンは省略)。真菌は毛髪(0.数ミリ)の1/100、細菌は1/1,000、ウイルスは1/100,000程度の大きさです。そのため、真菌と細菌は光学顕微鏡で観察できますが、ウイルスは電子顕微鏡でしか観察できません。また真菌と細菌は栄養と居場所があれば自力で増殖できますが、ウイルスは人の細胞に侵入(寄生)しない限り増殖できません。
 人が病原体と触れ合う感染経路には、垂直感染(母子感染)水平感染内因性感染の3つがあります。一般的に街中でおきる市中感染は水平感染で、接触感染飛沫感染空気感染媒介物感染の4つがあります。どの感染が起きるかは、人などの体内や環境中で病原体がどの程度生存できるかによります。病院や施設の中で起きる感染を医療関連感染と言い、免疫力が低下した人に起こる日和見感染が問題になります。最近注目されている感染症としては、新興・再興感染症輸入感染症人獣共通感染症性感染症があり、相互に重なり合う場合もあります。
感染症の検査には、分離・培養顕微鏡観察遺伝子検査免疫学的検査があり、病原体の特性や検査方法の簡便性、実効性等に応じ使い分けられます。治療方法には、化学療法免疫グロブリン療法対症療法一般療法があり、抗生物質等の薬剤を用いる化学療法が今はもてはやされていますが、最終的に感染症を治すのは人の免疫力ですので、免疫力向上のための一般療法(予防も含む)が最も大切です。ここまでは、ほぼ全ての病原体に共通した基礎知識になります。
さてウイルスは基本的に核酸(DNAまたはRNA)と酵素しか持っていないため、人の細胞に寄生して増えざるを得ません。どのウイルスにも寄生しやすい細胞があり、それ以外の細胞には寄生しません。また寄生後の細胞内でウイルスが増え細胞外に放出されるまでには一定の時間(潜伏期間)を要します。ウイルスは非常に小さく生きたまま直接観察できないため、体液等の試料(検体)中に含まれる遺伝子やタンパク質の解析・同定(PCR検査、抗原検査等)、血液中の抗体検査などを行い、その存在を間接的に証明します。ウイルスは人の細胞内に寄生しているためワクチンや治療薬の開発が難しく、また構造が単純で変異しやすく、開発されても効果が無くなってしまう(耐性獲得)ことが多いのです。
この知識を元に今回のコロナウイルス感染症2019(COVID-19)を眺めると以下の特徴が見えてきます。コロナウイルス(属)は、1本のRNAと酵素とエンベロープと呼ばれる殻から成り、変異を起こしやすく、免疫による攻撃を受け難い構造と言えます。人に感染するのは、感冒の原因ウイルスとして4つ、そして重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)が知られており、今回が7つ目となります。SARSは何とか囲い込むことができましたが、MERSは囲い込みに失敗し、今も限定した地域で感染が続いています。COVID-19は不顕性感染などの特徴が当初捉えきれず、そこに医学以外の思惑が絡んだため、世界中に感染が広がるパンデミックとなりました。主に鼻、口、眼から呼吸器に感染し、上気道から下気道へと感染が進みやすく、経過が長引く方の多くが肺炎になり、高齢者や基礎疾患(高血圧、糖尿病、COPD、がんなど)があると重症化しています。ただし肺炎で死亡する人の9割以上が高齢者であり、基礎疾患があれば感染症に罹りやすい(易感染性宿主)ことを踏まえれば、重症化因子は貧困、喫煙、衛生状態など他にあると私は考えています。既に遺伝子配列は解明されていますので感染の有無を調べる検査は可能ですが、ワクチンや特効薬の開発には時間を要するため、現状は対症療養・一般療法に頼るしかありません。また治安の悪い国では貧困かつ不衛生で、マスク、消毒薬、ガウンなど医療関連物資も乏しく、感染症対策を十分に行えないため、パンデミックの終息には年単位を要すると思います。不顕性感染により広がりやすく、致死率も著しく高くないため、このウイルスとは共存するものと予想しています。なお遺伝子解析の結果等からSARSウイルスとの相同性が高いためSARS-COV-2ウイルスと命名されています(SARSウイルスはSARS-COV-1と命名)。
今回のパンデミックから我々は何を学ぶべきでしょうか。医学の進歩により我々は感染症を克服したような錯覚に陥っていましたが、今も世界中で様々な感染症が多くの人命を奪っています。感染症は身近なものという認識を新たにし、感染症の基礎知識を身につけましょう。また国民皆保険という多額の税金で維持される制度により、少額の個人負担で一定水準の医療を享受できるため、病気に罹ったら治療すればよいという考えに偏っていました。感染症における予防の重要性は今多くの人が実感していると思います。習慣となった疾病予防への取り組みを継続し、医療機関を受診しなくても良い健康状態を維持しましょう。同時にワクチンの有難さも再認識できたと思います。今後は定期接種以外にも必要な予防接種は積極的に受けましょう。
今回のパンデミックで日常生活が急激に変化し、今まで当然と思っていた健康・安全・安心が失われました。パンデミックが終息しても新しい生き方の模索が続くと思いますので、喪失や変化に伴うグリーフへの対応が長期間必要となるでしょう。再度の外出制限を想定し、ストレスの解消方法を普段から試しておくこともお勧めします。また最前線でCOVID-19と対峙した医療、福祉、行政、消防、警察、物流、葬儀などに携わる多くの支援者が、災害時と同じ惨事ストレスに見舞われています。心的外傷後ストレス障害(PTSD)になる可能性が高いため、個人任せにせず所属組織が系統的かつ十分な取り組みを行うことが必要不可欠です。国の主導による十分な対応を期待したいと思います。
各生命保険会社は、COVID-19による保険事故に対し保険金・給付金の支払を行いました。これにより一定額が補填され、経済的な安堵を得られた方も多いと思います。この機会に保険商品の必要性を喚起し、新規加入もしくは必要な保証への見直しを勧めましょう。
このパンデミックにより日本だけでなく世界中が大きく変わると予想しています。今までと同じ社会の回復を目指す方も多いと思いますが、今回のことで今までの社会に欠けていた、もしくは変化を恐れて放置されていた多くのことが表面化しています。この機会に、より健康で安全で安心した暮らしができる新しい社会の創造に向け、国民一人ひとりが勇気を出して一歩を踏み出しましょう。

第3回 理事会のお知らせ

日時 8月8日(土) 13時~15時
場所 生命保険協会3階
※15時でビルの空調が止まりますので開会時間にご協力をお願いいたします。

常任理事会だより 

第7回常任理事会

2020年2月22日㈯
生保協会会議室
・新型コロナウイルスについて
・一泊研修中止について
・合同研修中止について
・各社代表者会議延期
・バスツアー研修について

第8回常任理事会

2020年3月28日㈯
郵便会議形式
・活動自粛について
・中間監査報告
・バス研修中止について
・公開講座中止について
・専門部会報告

第9回常任理事会

2020年4月25日㈯
郵便会議形式
・4月以降の活動について
・第2回郵便理事会返信結果
・紙上研修について
・社会貢献活動について
・「公開講座委員会」について

第10回常任理事会

2020年5月23日㈯
郵便会議形式
・後期の活動について
・森宮、大谷両氏叙勲について
・紙上研修について
・第3回理事会について
・47期生募集について

専門部部会だより

【会員サポート部】

1月18日㈯
•一泊研修販売物について
•バス研修の準備

2月22日㈯
•常任理事会報告
•一泊研修中止について
•バス研修状況確認

【学院サポート部】

1月25日㈯ 
•当番決め(4月~6月分)
•今後のスケジュール
•聴講制度等の意見交換

初の“リモート四役会議”

新型コロナウイルスの感染拡大で、政府からの「外出自粛」要請が出され、自宅から出ること自体控えるようにという
政策が発せられましたので、当会も、県を跨ぐ役員も居るところから、四役会を「リモート会議」(在宅型会議)とし
て、検証を兼ねて5月9日と5月16日の二回行いました。
 通常でも四役はLINEでの協議を重ねていますが、動画で参加者全員が同画面上で話し合える利点は大きいと思
います。今後の修士会の活動や行事でも、リモートで行わなければならない状況もあるかもしれないので、今般その
実証を兼ねたということです。
 結果は、効果ありでしたが、「郵便常任理事会」は再考の余地がありましたので、「テレワーク会議」「リモート会
議」の検証もしておく必要もあるようです。
会長 秋山 欣次郎

事務局からのお知らせ

事務局開局時間  午前10時~午後4時(月~金)
夏季休暇     8月8日(土)~8月17日(月)

学院だより

 新型コロナウィルス感染症COVID-19(病名)の感染拡大の対応で休講していましたが、緊急事態宣言の解除により授業を再開しています。体温測定・マスクをして、離れた椅子にて感染リスクを避けながらの授業となっています。
 時間割がタイトになっていますが論文・レポートの最終提出日である7月25日に向けて、お互いに声掛け、励ましあって、卒業に向けて決意を新たにしているところです。

47期生(9月3日入学式)募集推進活動をよろしくお願いします!

*35名以上に向けての推薦活動の推進をお願いします。

 新型コロナウィルス感染症対応をしつつの推薦活動をお願い申し上げます。
 体験聴講も実施しています。ご活用ください。
 面接日は7月18日 7月25日 8月1日 8月8日を予定しています。

*47期生の募集のためDMをしています。推薦をよろしくお願いします

 DM先 氏名 会社名 支社名 営業所 支部 オフィス名をお知らせください。協会便にて発送しますので代理店以外は住所不要です。
 FAX・メールにて学院事務局にご連絡下さい。FAX番号 03-3287-1913
 推薦者のご依頼による「入学案内」を学院から送付(DM)致します。
 お仲間のご推薦をお願いします。

〈学院のホームページの活用〉
 入学案内・リーフレットのPDF等ご活用ください。

6月・7月の学院講座科目

生命保険論
東京経済大学教授
米山 高生 先生

日常業務から離れた「時間」において、皆様が生命保険募集で得た貴重な経験を相対化し、「一皮むける」ような、経験をしてもらいたいと思っています。内容は、保険理論の基礎からはじまり、生命保険の特徴、歴史、規制などに焦点を絞り講義します。予習・復習、グループワークなどを導入し、頭の筋肉ストレッチが必要な講義となります。

損害保険論
早稲田大学商学部教授
中出 哲 先生

損害保険は、日常生活から企業活動まで様々なリスクに対処する制度で、多くの種類があります。講義では、損害保険の仕組み、歴史、市場、契約理論、主要な保険等を説明して、損害保険の広くて深い世界を知っていただきたいと思います。

リスクマネジメント論
明治大学名誉教授 商学博士
森宮 康 先生

組織( 企業)の活動は様々なリスクにさらされており、リスクについての判断や対応を誤れば組織の存続が危うくなることがあります。組織におけるリスク対応の意味を経営上の不祥事とされた事例をとおして考察します。

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